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最近ブログっていうのが流行ってるらしい。私が勝手に決め付けた事だけど。
なんか、よくネットでそういう単語を見かけるから、そうなんだろうなって。
私の友人のYもブログをやっているらしい。っていうか、ブログって何よ？
Yの話によると要するにブログっていうのはインターネットでの日記らしい。
「日記なのになんで他の人がコメントつけたりすんのよ、プライバシーの侵害じゃない。そもそもなんで公開なんかしてる訳？」って聞くと。
「馬鹿だな、それが楽しいんだよ。第一、秘密手記じゃないだから誰が見たっていいんだ。むしろ見せてるんだ。」と言われた。
私は別に興味がなかったが、Yの強引な勧めでそのブログというものを書いてみることになってしまった。
３日もたなかった。そもそも、何で人に日記なんか見せなきゃいけないのよ気持ち悪い。コメントなんかつけられたらたまったもんじゃないし、と思うのは私だけなんだろうか。
私は別に何か表現したいわけでもないし、Ｙみたいなネット依存症でもない。インターネットなんて辞書の代わりになって、テレ番がみれて、チケットでも買えればそれで十分だ。Ｙみたいな人間がたくさんいて日記にコメントを付け合ってるなんて信じられない。
しかし私もＹのことはネット依存症などと罵っていられないかもしれない。Ｙは現実からネットに逃避しているが、私は現実から演劇の世界へと逃避している。
大学演劇部部長であるのは将来役者をやりたいからじゃない、私は演劇なしには生きてられないんだ。役になりきっている間は、私は私でなくていいんだから。
大学の近くの居酒屋でＹにそんなことを愚痴ってたらこういわれた。
「じゃあ、いっそネットでもそういう役を作っちまえばどうだよ。
お前じゃなくて、お前が演じるまったく別の女が日記を書いてるんだ。大丈夫、どうせ実際に面が割れることはないぜ。ネットはネットだからな。」
なるほど。そういう手もあるのか。そういった割り切り方をしてしまえばブログとやらも結構楽しいものになるかもしれない。
幸い、文章を書くのはそんなに苦でもなかった。台詞やシナリオは舞台ので書き慣れていたし、自分の役を自分で決める事だってあった。
どうせなら名前も違うほうがいい。私は架空人格、ミホという人物を創り上げ、ミホが日記を書いているということにした。
ミホは私と違って、明るい性格で可愛いものが好きな、簡単に言うなら男の受けがいい娘だ。
ミホは今日あったことを日記に書く。ウィンドウショッピングをしたこと、欲しいぬいぐるみがあったがUFOキャッチャーに入っていて取れなくて悔しい思いをしたこと。ショップの店員が格好よかったこと。
私の知らない事を体験していて、私がやらないことを沢山している。そういう、設定だ。
***
ブログを始めて一ヶ月が過ぎた。
割り切ると結構楽しいものだった。演劇なんかには程遠いが他人になったような感じがする。
第一、本当の私を知らない低脳の男が架空人格に騙されて、
「ミホさんの日記おもしろいね、これからもよろしく＾-＾v」などと書いているのを見ると正直笑える。
***
数ヶ月が過ぎた。 Y君と久しぶりに会った。
「お前、変わったな。」って言われちゃった。
「えー、そんなことないよ。あたし前からこうじゃない？」
「服装だって、ずいぶん変わったじゃねぇか。前はそんなに派手なほうでもなかっただろ。化粧もしてないし。」
「うーん。覚えてない。あ、それよりさY君。こんどホームページの作り方教えてよ。ブログだけじゃ物足りなくなっちゃった。あ、あとねあとね。メッセンジャーも入れたんだ。Y君のメアド教えてよ。」
「本当にお前変わったなぁ…。」
***
一年後。あたしのHPは一日に100ヒットも飛ばす結構なサイトになってた。
毎日が楽しくて仕方がない。今度私のHPに来てくれる人とオフ会もするんだってY君に言ったら（メッセでだけど）Y君は一年前に戻りたいって言ってた。意味がよくわかんなかったけど。何なんだろ？？
あとね、よく夢を見るんだ。あたしが全く逆の性格のノゾミって娘になってしまう夢なの。
ノゾミはしっかり者で意志が強くて、ボーイッシュな感じの娘。だけど、演劇部の部長ですごい演劇が上手なの。
今日の日記はそのことについて書こっかな、きっといろんな人がおもしろいって言ってくれるんだろな。いまから楽しみ〜。
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