僕と閣下の独立記念日

「今日は私の独立記念日だ」
  僕がその日、閣下から最初に言われた言葉がそれだった。

  閣下というのは僕の大学の先輩のことだ。もちろんあだ名だけど、本人がこう呼べって言ってるんだからしょうがない。
 まぁ、そんな性格の人だからかなり性格がすごい。大学生にもなったのにこれだから、かなり僕としては心配になってしまう。
 でもなんで、独立記念日なんだろう。

「閣下、独立記念日ってどういうことですか?」
「うむ、よく聞け。今から22年前に私は独立した。つまりこれは私が他者に隷属されるものではない事になった」
「はぁ」
「言うなればそれは私が私という体の主になったような物だとは言えないか。つまりは私という一つの国家が成立したとは・・・・」
「言わないと思います」
 っていうか、何で素直に誕生日だって言わないんだろう。

「まぁ、そんな訳でだ」
  まったく僕の言うことを無視して閣下は続けた。
「祝おう」
  結局それか。

「たまには愚かに笑いながら火葬にした獣を噛み砕いて、植物原料のアルコールで肝臓を壊して発狂して、糖分を無駄に大量摂取して肉体を酷使しようじゃないか」
  翻訳するとまぁ、肉やお酒や甘い物を食べて飲もうって事だと思う。にしても何て言い方だ。
「拠点は確保してある。さぁ、行くぞ」
 半ば強引に連れ去られる形になった。

 結局、拠点とはレストランで。食事をして笑って怒られて弄られて楽しまれた。
「あぁ、楽しかった」
 閣下はさも満足そうな顔で笑いながら歩いている。
  普段はにこりとも笑わないのだから、これは相当酔っているのだろう。
  かくいう僕も、かなり足元がおぼつかないのだけれども。
「次はお前の独立記念日に祝いをしよう」
  この人は、いつも僕を振り回している。僕も黙って振り回されている。
  たまには僕だって閣下を驚かせてやろう。

  僕はあらかじめ用意していたプレゼントを閣下に渡した。銀の指輪だ。
「閣下、もしよろしければ我が国と同盟関係を結んではいただけないでしょうか」
  閣下は一瞬びっくりした顔になった。少しの沈黙の後、にやりと笑うと。
「いいだろう、我が国と同盟関係を結べることをありがたく思えよ。その代わり、もっと私を楽しませろ」
  と言って、指輪を嵌めた。
  たまらず、二人とも笑い出した。なんて台詞だろう、お互いもっと言い方があるだろうに。
  こんなロマンチックのかけらもない。そんな台詞に。
  いつまでも、くすくすと。

 しばらくしてから閣下は意地の悪そうな顔になると
「さて、両国間の関係を深めるために今夜は夜通しで作戦会議を開こうか」
  と僕に囁いた後
「なんてな、冗談だ冗談。」
  と笑った。心臓が早く動きすぎて止まったかのように思えた。
「お前が私を驚かせようなんて10年はやいよ。」
  と閣下はにやりと笑った。

  ・・・どうやら僕はいつまでも閣下に振り回されそうだ。




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