小話・仮面ライダー
小さい頃。僕の夢は仮面ライダーになって悪と戦うことだった。
恥ずかしくて誰にも言えなかったその夢。だけど必死になって運動や筋トレなどをした、僕は不言実行の男。いつかみんなを見返してやろうと躍起になっていた。
でも、そんな夢も忘れた。今や僕は大学生だ。
アルバイトを探していると
《正義の隊員募集・完全歩合制。才能をためすなら今!性別・年齢不問。今すぐ030-xxxx-xxxxへコール!!》
という怪しげなチラシがあった。
僕もかつてはセイギノミカタを志した身だ。今の日本には期待していないし、自衛隊よりもカッコいいんじゃないか。僕がこの世界を救ってやる、今まで眠っていた熱い心が目を覚ました。
早速電話をかけて、その足で面接へと行く。メガネをかけた事務の人に登録カードを書かされて。即採用みたいだ。
と、そこへ警報が鳴った!慌ただしくみんなが施設内を駆けていく。
「あ、君!早速事件みたいですよ。そこの強化スーツを着て、先輩と一緒に現場へ向かってください。現場までは輸送車がありますから。」
とさっきの事務の人が声を掛けると否やすぐにどこかへ行ってしまった。
「がんばってね。」と受付の娘が僕に声を掛けてくれた。この一言が僕に更に火をつけた。何故かって、僕のタイプだったから。
車の中で、先輩と思われる30歳くらいの男が僕に簡単に話してくれた。
「ここのシステムはな、強化スーツを着て。敵と戦うんだが。倒した敵の数やランクで給料が決まるんだ。」
「へぇ。そうなんですか。」僕もがんばらないとな。
「でな、自分にもランクがあって。そのランクでどんどん戦闘スーツもランクアップしてく。また敵が効率よく倒せるってー訳よ。」
「僕も仮面ライダーみたいになれますかね。」
「坊主、そいつは聞いちゃあならねぇ質問だな。想いは自分の胸に秘めとくもんだぜ。」
やっぱり修羅場を潜り抜けてきた漢の科白はちがうなぁ。
よーし、なんだかやる気がますます出てきたぞ。あ、現場へ着く前に急いで戦闘スーツに着替えないと。
現場へついた。いよいよ敵と対面のときだ。
「坊主、今日の敵は一人らしいがその分強敵だ!だが、仲間との連携をしっかり保って戦えばきっと勝てるぞ!!」
と檄を飛ばしてもらった。それはいいけど、坊主はやめてほしいな。
目の前には僕がきているような戦闘スーツより、ずっと性能の良さそうなスーツを着た奴がいた。あいつが敵か!
くそう、おまけにバイクなんか乗りやがって、仮面ライダー気分か。
いや、違う。仮面ライダーになるのは僕だ!!
しかし、速い。目の前の仲間がどんどん倒されていく。戦闘スーツを着てるはずなのにパンチやキック一撃で屈強な男たちがのされていく。
とうとう僕一人になってしまった。しかし、僕が倒されてももっとランクの高い人がコイツを倒してくれるはずだ!
勇気を出して立ち向かった。しかし、結果は同じだった。
朦朧とする意識の中で奴の目が真っ赤に光っている。体中がズキズキと痛む。
くそう。やっぱりショッカーなんて入るんじゃなかった。
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