コンビニ
うう、寒い。
先週からめっきり冷えて来た。冬将軍大活躍、である。
コタツという人類の英知を抜け出してみればそこはもう別世界。
罰ゲームとはいえこの真冬真夜中に外に出ろというのは酷な話だ。
……とっとと買出し済ませて帰ろう。
ひと時の暖房を目指して、私はコンビニの放つ灯りの中へと飛び込んだ。
コンビニの品揃えというのは、大概の必要なものはあるんだけれど、ややマニアックさに欠けると言える。
たとえばこれだ、チーズ蒲鉾。略してチー蒲。
かつては蒲鉾界のニューカマーであったろうその姿も見慣れ、今は古参の酒の肴になりつつある。
だが私が欲しているのはそこいらのチー蒲ではなく、特濃チー蒲なのだ!
しかし汎用性を追及したコンビニにそんなものがあろうわけがない。
というか「さぁさとくと御ろうじろ! ここにおわすは特濃チー蒲なるぞ!!」と言わんばかりに特濃チー蒲があったら困る。コンビニにそんなマニアックなもん置くな。
おとなしく普通のチー蒲を買おう。
酒はビールを何本か、缶チューハイは少なめに、日本酒はアパートにあるから問題ないとして。
……ああ。そういえば特濃チー蒲を欲してた輩が何かリクエストしてたな。
……スミノフ? それは一体どこのロシア人だ? え、イギリス人か。いやどうでもいい。
知るか知るか! 大体、特濃チー蒲もないようなコンビニにそんなわけのわからん名前の酒があるわけあるか!
と、一同が諦めかけたその時! スタッフは信じられないものを見たー!!
私の主観ではそんな具合に、アルコールが陳列する棚の端っこに、スミノフがあった。
スミノフは甘いらしい、現実も案外甘いようだ。
ついでに新作のお菓子はないかチェックをして、レジへと向かう。
てきぱきとよく動くおじさんの横で、中華まんが湯気を出している。コンビニにおでんと中華まんが並ぶと、季節を感じる。
春になれば、冬将軍は去り。おでんも、肉まんも、おじさんも撤去される。そう思うと少ししんみりとする。
……もとい、おじさんは撤去されない。
買出しをする自分へのご褒美に、私は湯気を立てているおじさんを買った。
だから、おじさんじゃねーって! 餡まんだ!!
餡まんを頬張りながら、私は愛しいコタツの元へと帰る。
帰れば、友人たちが乾杯のグラスを持って待ちわびている。そう思うと、足が自然と速くなる。いらないけど鍋奉行も待っている。
今夜は……鍋だっ!

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