ロング・ロング・ア・ゴー

  ずっと前のことだった。

 僕はまだ若く、大学生にして就職活動も控えてなかった。イカロスよりかは自由だった。
その頃の僕は、何がしたいってとにかく遊びたかった。主にモテたかった。
さらに具体的に言うと彼女が欲しかった。それは中学時代からのことだけど。
  だけど、モテなかった。当時の彼女できない歴は年齢と符号していたし、
また下手な鉄砲数撃ちゃば当たるという作戦も見事に失敗していた。
101回目のプロポーズ作戦は、警察のご厄介になりそうだったのでやめた。
  モテるためなら何でもやってきた。
インテリの振りをしたり、スポーツもできるサワヤカ系の皮を被ってみた。
こう言うと、どっちも駄目だったみたいに思われるけど、
どっちも人並み以上だったんだよ、いやホント。
古典落語を耳にタコが出来るくらい聞いて、トークの勉強もした。一時はお笑い芸人になろうかと思ったほど。

 毎日の日課はナンパをしたり、合コンの手配。
合コンといえば僕、と言うほど大学キャンパスでは名を馳せた、
他校とのコミュニティもばっちりだったから、誘う相手には全く苦労しなかった。
ナンパのし過ぎでホストやらなにやらの勧誘かと思われてしまうほどだった。
  そんな遊びすぎの僕だったけど、大学での素行は全く問題なかったし、落とした単位は一つも無かった。
実は人間中身が大事だっていうことぐらいは、僕にも良くわかってたからね。

 そんな数々のたゆまぬ努力の成果もあって、ようやっと僕にも彼女が出来るチャンスが訪れた。
合コン仲間の彼女の友達の友達、という言ってみれば赤の他人と。
最初は合コンで出会い、その後は皆でキャンプにいったり、海に行ったりとかなり手を尽くした。
そしてようやっと二人きりで遊園地に行く約束を取り付けたのだった。
そんなデート当日、もう最高でバラ色のひと時だった。
そして、最後に盛り上がってきたところで告白した。

 彼女の答えはノーだった。
「どうして……せ、せめて理由だけでも教えてくれないか!」
彼女はかなり躊躇っているようで、すごく小声で何事かを言った。当然僕は聞き取れない。
「え? 何だって?」
「あ、あなたの………」
その後、一瞬の沈黙。やがて彼女は意を決したように言った。

「あなたのアゴが長すぎるのよ!!」
そして彼女は走り去っていった。

 ずっと、そう。ずっとずっと前のことだった。



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